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何故イコライザー回路を公開したのか?
何故イコライザー回路を公開したのか
今年のミュンヘンオーディオショーではSoulutionから光カートリッジ対応イコライザーの発売が正式にアナウンスされました。これでSoulnote,EMM Labs,上杉研究所,Meitner audio, Soulution,Westminsterlab等々既に6ブランド以上が光カートリッジ対応イコライザーを発売してくれたことになります。
この光カートリッジ用イコライザーの回路情報の公開は4年程前から開始しました。
公開当初は「重要な機密情報なのに何故回路情報を公開するのか?」「他社がイコライザーを作るとDS Audioのイコライザーが売れなくなるのではないか」等々様々な反対意見を頂きました。今回は何故イコライザー回路情報を公開し、他社が光カートリッジをサポートすることを推進しているのかの理由について述べてみたいと思います。
現在の私達の最大の目標は、現在”ユニーク”な存在である光カートリッジをMM/MCカートリッジに並ぶ、第三のカートリッジとして”ポピュラー”なカートリッジにすることです。
もし”ユニーク“な状態で良いのであれば、DS Audio製のイコライザーのみで十分で他社製のイコライザーは不要かもしれません。しかし光カートリッジを”ポピュラー”なカートリッジにする為には、お客様に様々な製品の中から自分に合った製品を選ぶという選択肢が必要です。
当然DS Audioとしては、自社の製品が一番良いものであるという自負を持って製品創りをしていますが、他のブランドにはDS Audioとは違った光カートリッジの魅力の引き出し方があり、光カートリッジに新たな魅力を与えてくれます。このような多様性が生まれることで、お客様にとって光カートリッジがより魅力的なカテゴリーとなり、”ポピュラー”なカートリッジに近づいていくものと信じています。これがイコライザー回路を公開した最大の理由です。
また別の視点として、私は他のブランドと手を取り合いながら業界全体をより魅力的な業界にしたいといった想いがあります。
私達のいるオーディオ業界は、一般的には衰退産業を言われていて年々厳しさが増すばかりです。このような業界を盛り上げる為には一社単体ではどうしようもなく様々な会社が手を取り合いながら業界全体を盛り上げる必要があります。
趣味の製品であるオーディオ製品の本質的な競合は、可処分時間の奪い合いという観点で、釣り、車、SNS、Netflix等々他の趣味の製品(サービス)です。
そういった意味において、私達オーディオ製品を創るメーカーは、オーディオ自体をより魅力的なマーケットにする為に手を取り合う関係であるべきで、決して歪み合う関係であってはなりません。もしオーディオ自体の魅力が低下し続けるようなことがあれば業界全体が沈没してしまうからです。このように私は他のメーカー様を競合とは全く考えておらず、共に手を取り合いながらより魅力的な製品を出していきたいと考えています。その為回路情報の公開に際し、DS Audioが一切ライセンスフィーをもらうこともありませんし、開発における技術サポートも全て無償で行なっております。(一般のお客様からのお問い合わせに関しましては、弊社のリソース不足でお断りさせていただいております。申し訳ございません)
このような理由や想いがあり4年程前にイコライザー回路情報をweb上に公開しました。
その結果多くのブランドが光カートリッジ対応フォノイコライザーを製品化してくださり、現在も多くの会社が光カートリッジ対応フォノイコライザーの開発を進めてくれています。
まだまだ光カートリッジをユニークなカートリッジからポピュラーなカートリッジにするという目標へは道半ばですが、これからも一歩ずつ地道に頑張っていこうと思います。
DS Audio代表
青柳哲秋