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TB-100 レビュー by Hi fi News

イギリスのHi Fi NewsにTB-100のレビューが掲載されました。

■ 要約

製品概要
DS Audioが初めて投入した真空管式の光カートリッジ専用エナジャイザー兼イコライザーが「TB-100」。同社の全光カートリッジに対応し、ソリッドステート式モデルとの価格差や音の違いを明確化する新たな選択肢として位置付けられている。

設計と特徴
ECC82/12AU7系の真空管を左右独立で合計4本使用し、二段増幅+カソードフォロワ回路を採用。背面にはRCA入力(DS Audio光カートリッジ専用)と2系統のRCA出力を備え、サブソニックフィルタや30Hz/50Hzの切り替えスイッチも搭載。左右独立電源回路による低ノイズ設計と真空管特有の表現力が特徴。

音質評価

真空管ならではの温かみと艶、空間性の豊かさが際立つ
DS Audioカートリッジが持つ高解像度や透明感とよく調和し、過度な色付けは感じられない
ロックやフォーク、ジャズなど幅広いジャンルでアタック感やニュアンスが豊かに表現される
ソリッドステート式との比較では、より“ロマンティック”な面が強調される一方、低域の切れ味やSN比も十分に良好

計測結果

約+25.7dBのゲインと24Vの最大入力(THD1%時)を確保
歪率(THD)は0.03〜0.3%程度と、実用上充分に低い
周波数特性は20Hz~20kHzでほぼフラット、サブソニックフィルタやローカットスイッチで帯域調整可能

総括
真空管による音楽的な質感と、DS Audio光カートリッジの正確性を両立させた製品。上位ソリッドステート機よりも価格を抑えつつも、チューブサウンドの魅力を存分に引き出している。「自分が真空管好きなら、ためらいなくTB-100を選ぶ」と評者が太鼓判を押すほど、完成度の高い一台である。

■ 翻訳本文
見出し・導入部

DS Audio TB-100
「アナログサウンドの新時代」を掲げるDS Audioが、光カートリッジのラインナップ拡充に合わせて初のオールチューブ・エナジャイザー/イコライザー「TB-100」を投入。その実力はいかに?
Review: Ken Kessler / Lab: Paul Miller

これは、私が今まで書いた中で最も“自己実現的”ともいえるレビューかもしれません。DS Audioは、独自の光カートリッジ用にバルブ(真空管)式エナジャイザー兼イコライザー「TB-100」をついにリリースしました。これまで同社の各カートリッジには、価格帯やグレードが近いソリッドステート(半導体)式のエナジャイザーが用意されていましたが、TB-100は単独で登場した初のチューブ機です。
なぜなら、DS Audioのカートリッジは価格を問わず、同社のどのエナジャイザーとも組み合わせて使えるからです。これまでにも比較的手頃な価格帯から上位機まで、さまざまなエナジャイザーが用意されてきましたが、TB-100はラインナップの「真ん中よりやや上」に位置し、しかも真空管式としては初めてとなります。
DS Audioのカートリッジは、DS-E1、DS 002、DS 003、DS-W2、DS-W3、Master 1、Grand Master、…と多彩なモデルを展開していますが、そのどれを選んでもTB-100との組み合わせが可能です。

設計・構成について

TB-100の概要
TB-100は、既存のDS Audio光カートリッジすべてに対応しつつ、“真空管ならでは”のサウンドを引き出すためのエナジャイザー/イコライザーとして設計されています。外観は金属製シャーシに真空管が整然と並び、天面に“DS Audio”のロゴが控えめに配されています。
背面にはRCA端子が1系統(光カートリッジ入力用)と2系統のRCA出力があり、出力1は標準RIAA特性に準拠したもの、出力2は20Hz(–6dB/oct)のサブソニックフィルタを組み込んでいます。さらに背面のトグルスイッチでは30Hzや50Hzのローカットを切り替えられ、使用環境に応じた設定が可能です。
真空管はECC82/12AU7(デュアルトライオード)をベースに合計8本使用。4本ずつ左右チャンネルを構成し、二段増幅+カソードフォロワで構成された「完全左右独立回路」を採用しています。電源部も左右独立で、高電圧と低電圧を分けて制御。電源投入後60〜90秒でウォームアップが完了すると、LEDが赤から緑に変化し動作状態に入ります。
DS Audioのカートリッジはフォノ入力ではなく「光電変換出力」を持つため、他社製フォノステージやMM/MCカートリッジとは基本的に互換性がありません。本機も専用入力からの光カートリッジ信号のみ受け付ける設計で、絶対に他のカートリッジを挿さないよう注意が必要です。

セットアップ・接続上の注意

接続方法
本体背面のRCA入力「AC-INPUT」はDS Audioカートリッジ専用。RCA出力は「Output 1」と「Output 2」の2系統。

Output 1: RIAA特性に近い標準カーブ、フラットに出力
Output 2: 20Hz付近から–6dB/octのローカットがかかるサブソニックフィルタ付き
さらにもう1つのトグルスイッチで「30Hz/50Hz」の追加ローカットを選択可能です。

エナジャイザーへの接続・取り外し時は必ず電源を切った状態で行う必要があります。通電状態での切り替えや他のカートリッジとの混用は厳禁です。

DS Audioがここ10年あまりで築き上げた光カートリッジの世界は、従来のMCやMMとは異なるアプローチを実現しており、既に複数ブランドがこの光カートリッジ方式に対応するフォノステージを開発し始めています(Soulution、EMM Labsなど)。とはいえ、やはりDS Audio純正のエナジャイザーを使うのが基本という考え方も根強くあります。本機TB-100は、同社のソリッドステート式エナジャイザーよりも価格を抑えた真空管モデルとして登場しましたが、その“真空管か、トランジスターか”という議論は既にオーディオ界で長く続いてきたテーマでもあります。

実際のリスニング・試聴レポート

音質テスト:チューブならではの世界
筆者が本機を試聴したのは、ちょうど冬の寒い日でした。TB-100をシステムに接続し、電源投入から数秒後に管球が光り出す様は、バルブオーディオ愛好家にとってまさに“目のごちそう”です。ところが、その後に訪れたサウンドの第一印象は「予想以上の衝撃」でした。
筆者はDS Audioのカートリッジとエナジャイザーを数多く聴き込んできましたが、ここまで“開けた”サウンドは新鮮。真空管式らしい艶と空気感がありながら、過度に色付けされることなく、高解像度で伸びやか。最初に再生したCrosby, Stills & Nashの『Atlantic 75』(Rhino RCD1 8229)で、その繊細さと奥行き感、加えて生々しい感情表現の豊かさを実感し、“新しい何かが起きている”と感じたのです。
もちろんアナログの良さが詰まっていて、DS Audioのこれまでの路線とも通じる部分がある反面、“真空管サウンド”と呼ぶにふさわしい自然な温かみや質感がきわだちます。Bob Dylanの最新リマスター盤をかけたときも、アコースティックギターやハーモニカ、そして彼の独特なボーカルが空間に溶け込むように定位し、余計なエッジや刺激感が抑えられつつ情報量はしっかり確保されていました。

真空管VS.トランジスター再び?
DS Audioにはソリッドステート式の上位モデルも存在しますが、TB-100はその3分の1ほどの価格に抑えられています。では、ハイエンドの“Master Series”に比べて遜色があるのかというと、そういうわけではなく、あくまで「真空管の味わいを楽しむ選択肢」として位置付けられているようです。
筆者自身、ソリッドステート式の切れ味やスピード感が好きな一方、チューブならではの甘美な表現力にも強く惹かれます。TB-100はその両極にある要素のバランスが絶妙で、例えばヴァン・ヘイレンの『You Really Got Me』(Mobile Fidelity UD1S 2-032)でもギターのエッジが明瞭かつアタックが鋭く、低域もダレずにキレ良く再生されました。ただしトランジスター式に比べると、最深部はややソフトに感じるかもしれません。

結論:楽しめる“新たな選択肢”
ではTB-100がソリッドステートより“優れている”のか、それとも“違う”だけなのか? そこはもう好みの問題でしょう。しかし、ロックからフォーク、ジャズまで多彩なジャンルで聴いた結果、TB-100は真空管の豊潤さとDS Audio独自の光カートリッジによる高解像度を見事に両立させていると感じました。
筆者が強く印象に残ったのは、トランジスター式のシャープさとチューブ式の柔らかさの両面がバランス良く同居している点です。これはDS Audioの他エナジャイザーを聴き込んできた人ほど、より明確に違いを感じられるでしょう。

最後に、もし私が£17,500(約◯◯万円)ほど手元にあるなら、間違いなくこのTB-100を選ぶと思います。真空管らしいロマンティックな質感を楽しみながら、長年にわたって培われたDS Audioのテクノロジーを活かした光カートリッジサウンドを満喫できる、そんな“甘美かつ正確な世界”を手にすることができるからです。

ラボレポート(計測・仕様)

ラボレポート:DS Audio TB-100
DS Audioの光ピックアップは、増幅回路によって周波数応答が変化しますが、本機は高域になるほど出力がやや減少し、RIAA特性に近い形でフラットに整えています。サブソニックフィルタのオン・オフで20Hz以下を–12dB程度抑えるかどうかを切り替えられます。
TB-100の真空管ステージは約+25.7dBの利得をもたらし、ヘッドルーム(最大入力24V/THD1%)も十分確保。THDは0.33%程度(1kHz/出力2Vrms想定)で、帯域20Hz〜20kHz間ではほぼ0.03%付近の特性を示します。一方、上位ソリッドステート機(DS-E3など)は0.0003〜0.0015%とさらに低歪率ですが、TB-100でも充分に低い値といえます。
周波数応答は20Hz〜20kHzで–3dB〜–1dBほどのわずかな変動。SN比は80.3dB、最大出力(1% THD時)は24V、入力感度は8mV程度で、インプットリードは51.6mV、消費電力は約27W。サイズは幅440×奥行き350×高さ192mm、重量は約18.7kgです。

総評

Hi-Fi News Verdict
この結論は、TB-100の「存在意義」を改めて示すものだといえます。つまり、本機は“オール真空管”であることにこそ意味がある。DS Audioのソリッドステート式エナジャイザーとの比較では、ピュアで正確なサウンドを求めるか、よりロマンティックな温かみを求めるかという好みの問題になります。TB-100は、真空管ならではの豊かな表現とアナログらしい繊細さを兼ね備え、“より音楽を楽しみたい”というユーザーに十分訴求し得る製品でしょう。
もしあなたが自分の好みやシステムにおいて真空管サウンドに魅力を感じるなら、£17,500(参考価格)を払う価値は大いにある、と筆者は断言しています。

 

全文はこちらからご覧いただけます。(英語)